相続が発生すると、まずは相続人が誰なのかを特定する必要があります。法定相続分、遺留分、相続税の計算なども、相続人が誰なのか、人数は何人かが大前提です。例えば再婚で初婚の時の子がいるか、過去に非嫡出子や養子がいるかなどの事情が、後で分かると、それまでの手続きがやり直しになることもあります。
従来は、出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえるには、まずは最後の本籍地で最新の戸籍謄本を取り、これ見て読み解き、一つ前の戸籍を取ります。別の市区町村の場合も多く、再度郵送手続きなどで申請し取得して読み解き、また一つ前の戸籍を取る。これを何度か繰り返し、出生までさかのぼります。これらは、手間と時間がかかる作業でした。
そこで、法務省では2024年3月から、「戸籍証明書等の広域交付」を始めることになりました。
この制度では、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります(広域交付)。
これによって、
【どこでも】
本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます。
【まとめて】
ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます。
※ コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍を除きます。
※ 一部事項証明書、個人事項証明書は請求できません。
外国籍を取得すると日本国籍を失うという国籍法11条は、自己決定権などを侵害する憲法違反か否かという裁判で、福岡地裁は、合憲判断を下しました。
福岡地裁の考え方は「同法は外国籍の取得の際に、日本国籍と外国籍を選択する機会を与えている」「二重国籍の発生予防のため合理的」というものでした。
なお、世界的には、重国籍容認をしている国は2020年では約4分の3の国となっています。
国籍法11条1項は「日本国民は、自己の志望によって外国籍を取得したときは、日本国籍を失う」と定めています。
自己決定権とは、個人的な事柄について公権力から干渉されることなく、自由に決定する権利です。日本国憲法第13条で保証されている幸福追求権の一部と考えられており、公共の福祉に反しない限りにおいて尊重されます。
自己決定権の例としては、次のようなものがあります。
結婚・出産、治療、服装、髪型、趣味、性や家族のあり方、生命・身体。
自己決定権は、憲法において明文で定められていませんが、ほとんどの学説が憲法の解釈によって認められるとしています。