遺言・相続 用語集
杉並区 | 行政書士中村光男事務所 遺言と相続の基礎的な用語集です。

用語集 (遺言・相続)

あ行

遺言(いごん)

遺言は法的には「いごん」と読みます。
遺言とは、一生をかけて自分が築き守ってきた財産を、後の世代に最も有効に活用してもらうために行なう遺言者の意思表示です。遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。

遺言信託

遺言によって、信頼できる人や団体に、財産を譲渡(信託)するなどして、残された配偶者や、障害を持つ子のために、その財産を管理または処分し、必要なことを行ってもらう制度です(信託法3条2項)。民事信託・家族信託などと呼ばれます(※)。
なお、信託銀行の商品名で「遺言信託」というものもありますが、これは「遺言書の作成のアドバイス+遺言書の保管+遺言執行」のパッケージサービスのことですので、法的な意味での「信託」とは異なります。
(※)民事信託・家族信託をする方法には次の3つがあります。
 1.契約による信託 <例> 父(委託者)が息子(受託者)と信託契約する。  
 2.遺言による信託 <例> 父(委託者)が遺言で息子(受託者)に信託する。
 3.自己信託(信託宣言) <例> 父(委託者)が自分(受託者)として信託する(公正証書等が必要)。 

遺言の効力の発生時期

遺言の効力は遺言者の死亡のときです(民法985条1項)。このため、遺言に書いたことと異なる財産の処分を、生前に遺言者が行なうことは可能です。また、未成年であっても15歳以上の人は親の同意なく遺言ができるのも、死亡時に効果が発生する遺言については、遺言時の未成年者の保護を図る必要がないからです。

遺言検索システム

「遺言検索システム」とは全国のどの公証役場でも利用できるもの。公証役場が公正証書遺言をデータで管理しており、遺言の存在の有無も照会することができます。ただし、遺言検索システムでは、遺言の内容までは確認できません。遺言の内容を確認するためには、公正証書遺言を作成した公証役場に対して、遺言原本の閲覧や正謄本の交付を請求する必要があります。

遺言執行者

遺言書の内容にしたがい、故人の意思を実現する役目を担います。遺言執行者は、多くの場合、遺言書のなかで指定されます。

遺言認知

認知は、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)を、自分の子であると認め、戸籍法上の届出を行なうことです。遺言認知は、認知の方法のひとつで、遺言によって子供を認知するものです(民法781条2項)。認知は生前でもできますが、何らかの事情で生前の認知ができない場合に遺言による認知が行われます。認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児を認知する場合は母親の承諾が必要です(民法782条、783条1項)。なお、遺言認知があると相続人が増えることになりますので、相続人と認知を受けた人との間には利害相反関係が生じます。そのため、遺言で子の認知を行なう場合は認知届を行なう遺言執行者を立てることが必要です(戸籍法64条)。

遺言能力

遺言者が遺言の際に、遺言内容及びその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力(判断力)のことです。民法では、満15歳になった人は、遺言ができるとしています(民法961条)ので、15歳以上であることも遺言能力の条件となります。
遺言者が認知症になったり、死期直前で判断力がない段階になってしまうと、相続トラブルを恐れ、金融機関や遺言の専門家も関与しにくくなります。遺言は自分が元気なうちに作成することが望まれます。

遺贈

遺贈とは、遺言によって、遺産の全部または一部を、無償であるいは負担付きで、他人に譲ることです。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります(民法964条)。遺贈を受けたもの(受遺者)は遺言者の死亡後にいつでも。遺贈の放棄ができます(民法986条)。
遺贈と相続との違いは以下のような点です。
・遺贈は遺言を残す必要がある。
・譲る相手(受遺者)は相続人でなくてもよい。また、受遺者は個人でなくNPOなどの団体でもよい。

自筆証書遺言

遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言については、民法で「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(968条1項)とされています。

 

か行

換価分割

相続財産を売却換金して、その売却代金を相続人間で分配する方法です。

共同遺言の禁止

夫婦など2人以上の者が同じ証書に記載する遺言のことす。共同遺言は、民法975条で禁止されています。禁止理由ですが、共同遺言では、複数の合意の遺言となるため、個人個人が自由な意思によって遺言をつぅったのかが疑問ですし、いつでも自由な遺言の撤回なども困難になるからです。

寄与分

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人に対し、遺産分割で決定した相続分に加えて、貢献の度合いに応じた相続分をプラスすることができる制度です(民法904条の2)。寄与分が認められるのは法定相続人だけです。親子間などの親族間では法律上一定の扶養義務が、また夫婦間には扶助義務がありますので、一般的な貢献では特別な寄与とは言えません。

限定承認

相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことです。限定承認を選択する場合は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に、相続人全員が共同で被相続人の住所地の家庭裁判所に申述する必要があります。

検認

検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

公正証書遺言

遺言者が、原則として、証人2人以上とともに公証人役場に出かけ、公証人に遺言内容を口述し、公証人が筆記して作成するものです。形式の不備で無効になるおそえれがありません。また、原本は、公証人役場にて保管されるため、紛失・隠匿・偽造のおそれがありません。 家庭裁判所による検認手続が不要となります。

公証役場

公証役場とは、公証人が遺言、各種契約、定款や私署証書の認証、確定日付の付与などの職務を行う公の事務所です。

公証人

法務大臣から任命された法律の専門家で、公正証書の作成や私文書の認証などを行う公務員です。
公証人は、裁判官、検察官、弁護士、法務局長、司法書士など、長年法律関係の仕事に携わってきた人材の中から選ばれます。原則として30年以上の実務経験がある人が任命されます。

 

さ行

再代襲相続

相続人の子も相続開始よりも先に亡くなっているようなときは孫が、孫も亡くなっていればひ孫が・・・という様に、どこまでも下の代まで代襲して相続をするという制度もあります。これを、再代襲相続といいます。再代襲は、相続発生前に「子」が死亡している場合に生じます(民法887条3項)。
兄弟姉妹が相続人になる場合にも、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合には代襲相続の規定が適用され、兄弟姉妹を代襲して甥や姪が相続人になります。
しかし、子の代襲の場合とは異なり、甥や姪が亡くなっている場合は、さらに甥や姪の子供は相続人になりません。兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合の代襲相続は、甥や姪1代限りとなります。

死因贈与

贈与者の死亡によって効力を生じる生前の財産の贈与契約のことです。遺贈と同じ扱いになり、相続税の課税対象になります。

死因事務委任契約

本人(委任者)が死亡した後に発生する様々な事務処理を行なう人(事務受任者)を予め定めておく契約のことです。
依頼する事務処理は、例えば、依頼者が亡くなったあとの葬儀、お墓の管理、行政への届出、住居の明け渡し、親族など関係者への連絡、医療費や施設利用料の清算、ペットの世話、SNSアカウントの削除などですが、委任者の希望に合わせて細かく決めることができます。

死後認知

 

死後認知とは、非嫡出子(=法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子)と既に死亡した父親との親子関係を法律上確定するための手続きです。
死後認知が認められると、その効力は出生の時にさかのぼります(民法784条)。認知された非嫡出子は父親の遺産を相続できます。このように、死後認知は非嫡出子の相続権を確保する制度です。
なお、父の死後に凍結保存精子で懐胎した子供は、父の相続人になれないという判例(最判平18.9.4)があります。

失踪宣告

失踪宣告とは、生死不明の人について、家庭裁判所が「法律上は死亡したもの」とみなす制度です。失踪者を死亡したものとみなし、財産関係などについての法的な安定を確保するのがこの制度の趣旨です。(民法30条~32条)

自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言は自書さえできれば遺言者本人のみで作成でき、特別の費用もかからず手軽で自由度の高いものです。しかし、遺言者の死亡後、相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等に改ざんされる等のおそれが指摘されていました。この自筆証書遺言のメリットは残して、問題点は解消する制度として、2020年7月から開始した制度が、法務局(遺言書保管所)での保管制度です。

受遺者

遺言によって遺贈を受ける人。受遺者は自分の意思によって遺贈を受けることも放棄することもできます。

受贈者

贈与を受けた人を受贈者といいます。

準確定申告

相続税の申告とは別に、被相続人の生存中の所得にかかる所得税について、相続人が代わりとなり申告・納税することです。

審判

裁判所が相続争いなどの事件を審理して判断、または判決を下すことです。

推定相続人

現状のまま相続が発生した場合に相続人になるべき者のことです。

成年後見人制度

認知症や知的・精神障害などで判断能力の不十分な人を保護する制度で、家庭裁判所が決めた成年後見人が、本人に代わり財産管理等を行います。
高齢化などにより判断能力が低下すると、日常生活上で、財産への不利益を受けたり、人間の尊厳が損なわれたりする心配が生じてきます。このような場合において、法律面や生活面を支援する仕組みが「成年後見制度」です。
本制度のうち判断能力が衰える前に、本人が「支援する人」と「支援内容」を決めておく仕組みを「任意後見制度」といいます。また、判断能力が衰えた後に支援する仕組みを「法定後見制度」といい、支援の必要性によって、「補助」「保佐」「後見」の3類型があります。 詳しくは⇒成年後見制度をわかりやすく整理しました。

相続欠格

相続欠格とは、相続人が重大な非行を行った場合に、遺産を相続する権利を失う制度です(民法891条)。

相続欠格の事由には、次のようなものがあります。
・故意に被相続人や相続人を殺害したり、殺害しようとしたりして、刑に処せられた者
・被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
・故人が殺害されたことを知って告訴や告発をしなかった者
・詐欺または強迫によって故人に遺言に関する行為をさせた者
・詐欺または強迫によって故人の遺言に関する行為を妨げた者

相続廃除者は受遺者になれますが、相続欠格となった者は受遺者にもなれませんし、遺留分もありません。
ただし、被相続人から「宥恕(ゆうじょ:罪や過ちを許すこと)」してもらうことで再度相続人に認められた裁判例があります(広島家裁呉支部平成22年10月5日審判)。

相続人不存在

法定相続人がいない場合は、民法の「相続人不存在」の規定が適用され、その方の財産は、 最終的に国庫に帰属することになります。
もし、ご自身に法定相続人がいない場合に、お世話になった方や 親しい方、または財団などに財産を残したいなどお考えでしたら、遺言でその意思をのこすことをおすすめします。

相続廃除

相続廃除とは、被相続人がその者に財産を相続させたくないことも当然と思われるような事由(例えば、被相続人を虐待しているなど)がある場合に、被相続人の意思に基づいて、その者の相続権を失わせる制度です(民法892条~895条)
相続廃除の対象者は、「遺留分を有する」推定相続人のみです(遺留分がないなら、遺言で相続させないことができるため)。
相続廃除の手続きができるのは、被相続人のみです。手続きの方法は、生前廃除と遺言廃除(遺言執行者が手続きを行う)の2つです。なお、高齢による認知症等で被相続人本人が行為能力の制限を受けていても、法定代理人によらずに自分で手続きができます。

相続分の指定

相続分の指定とは、遺言により、共同相続人のうちの一部の者の相続分を法定相続分と異なった割合に定めることであり、民法902条に定められています。被相続人が遺言で相続分を指定する方法と遺言で第三者に相続分の指定を委託するという方法があります。

相続財産法人

遺産相続が始まり、被相続人の戸籍上相続人の存在が認められない場合や、相続人がいてもすべての相続人が相続放棄をした等の場合は、被相続人の遺産は「相続財産法人」となります。 民法951条

相続時精算課税制度

2,500万円まで課税されずに贈与できる制度で、贈与された財産は贈与者が亡くなったときに贈与時の価額で相続財産に加算され、相続税で精算されます。ただし、適用には一定の要件があり、適用対象者については贈与者が60歳以上の親および祖父母、受贈者が18歳以上の子および孫です。

相続税の基礎控除額

相続税額を計算するうえで一定額差し引くことのできる金額のことで、[3,000万円+法定相続人の数×600万円]で計算されます。

相続放棄

相続が発生した際、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しないことです。相続放棄をする場合は、自分に相続権があることを知った日から3ヵ月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に申述しなければなりません。相続放棄するとその法定相続人は初めから相続人でなかったことになります。

 

た行

胎児の相続

民法は、まだ生まれていない子ども(胎児)にも、相続人の地位を認めています(民法886条1項)。
胎児は相続においてはすでに生まれたものとして扱うため、胎児も、遺産分割、代襲相続、相続放棄が可能です。
ただし、母親が胎児の代理人として決定権を持つとすると、母親有利の内容で遺産分割協議を成立させることができてしまいます。そのため、この場合にも適法に遺産分割を実現するためには、特別代理人を選任する必要があります(民法826条)。
実務上は、遺産分割を急ぐ特段の事情がない限りは、出生後に特別代理人を選任し協議をすることが望ましいとされます。 なお、不動産登記実務では、胎児名義の登記手続きも認められています。

代襲相続人

相続人となるはずであった子または兄弟姉妹が、被相続人より先に死亡した場合や、相続欠格、推定相続人の廃除によって相続権を失った場合、その者に代わって相続人となる者を代襲相続人といいます。
子の代襲相続は孫、孫が被相続人より先に死亡している場合などはひ孫、というように無制限に下ります。一方、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までとなります。
相続放棄した者の直系卑属は代襲相続が認められていません。

調停

民事上または家庭内の紛争を解決するために、裁判所が仲介して当事者間で和解させることです。

直系尊属

「直系」とは、タテの血縁関係で、「尊属」は目上の者です。したがって、自分の父母、祖父母、曾祖父母などを指します。

直系卑属

「直系」とは、タテの血縁関係で、「卑属」は目下の者です。したがって、自分の子、孫、曾孫などを指します。

特定財産承継遺言

特定財産承継遺言とは、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言です。民法は「遺産の分割の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言」と定義します(民法1014条Ⅱ)。例えば「土地A・建物を長男に相続させる」、「土地A・建物を長男に、土地Bを長女に相続させる」といったものです。このように遺産と相続人を指定した遺言は、以前は「相続させる旨の遺言」と呼ばれていました。しかし、2019年7月に改正民法が施行され、「特定財産承継遺言」と呼ばれるようになりました。
<特定財産承継遺言と遺産分割>
特定財産承継遺言については、判例上、遺産分割方法の指定(民法908条)を定めたものと解されていますので、遺言で特別に規定しておかないと、相続発生により、何らの行為を要せず当該相続人に財産が承継され、遺産分割の対象となる財産から逸脱してしまう、と考えられています。ただし、裁判例(さいたま地判平成14年2月7日)では、特定財産承継遺言の場合についても相続人全員で遺言と異なる内容で遺産分割協議を行うことが認められており、実務上も同様です。
なお、この場合の税金について国税庁は「特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときには、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。したがって、各人の相続税の課税価格は、相続人全員で行われた分割協議の内容によることとなります。」としています。(No.4176 遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税
<承継させる旨の遺言と特定財産承継遺言>
 「承継させる」と「相続させる」は法的には同じ意味です。以前は「相続させる旨の遺言」と呼ばれた遺言を、民法が1014条Ⅱは「承継させる旨の遺言」という用語で表したからです。
<「財産の一定割合または全部を相続させる遺言」と特定財産承継遺言>
 仮に「相続させる」という文言を使った遺言でも、”遺産の1/2を配偶者に、1/4を長男に相続させる”といった遺言は、特定財産承継遺言ではなく「相続分の指定」(民法1046条I但し書き)です。ただし、法定相続分を超えるときに登記が必要であったり、遺留分侵害があれば遺留分侵害額を負担するなどの法的効果は同じです(二宮周平「家族法第5版」462p)。
 なお、専門家によっては、”遺産の1/2を配偶者に、1/4を長男に相続させる”といった遺言も「相続させる旨の遺言」または「特定財産承継遺言」と呼ぶ人もいるのでご注意ください。
<遺贈と特定財産承継遺言の違い>
 遺贈は遺言により遺言者の財産を他人に贈与することです。もらい手は相続人でも第三者でもかまいません。一方、特定財産承継遺言は、相続人に特定の財産を相続ないし承継させることです。もらい手は、相続人に限られます。したがって、同じ遺言書で、財産Aを相続人Xにあげ、財産Bは友人Yにあげたい場合は「財産AをXに相続させ、財産BをYに遺贈する」と書くべきです。
 またこの例で、友人Yが財産Aをもらうことを辞退したい場合は、友人Yは遺贈を財産Aの遺贈の利益を放棄できますが、相続人Xは遺言による遺産分割を辞退できず、どうしても嫌なら相続自体を放棄する必要があります。
<特定財産承継遺言と代襲相続>
 遺言で特定の相続人に特定の財産を相続させるとしたが、その相続人が遺言者が死亡より前に死亡した場合に、その子どもに代襲相続されるのでしょうか。判例は、「特別の記載がない場合は、(特定財産承継)遺言には代襲相続が適用されない」と判断しています。遺言者の通常の意図は、特定の相続人に対するもので、その子に対して相続させようというものではないからです。

特別寄与料

法定相続人以外の一定の親族も亡くなった方に多大な貢献する人(義父の看護をしたお嫁さんなど)のためにできた制度です。
特別寄与料とは、無償で行った療養看護その他の労務の提供をしたことにより亡くなった方の財産の維持や増加に寄与した相続人以外の親族(特別寄与者)が、相続が始まった後、相続人に特別寄与者の貢献に応じた金銭(特別寄与料)を請求できるものです(民法1050条)。
特別寄与料として認められるのは、「労務の提供」に限られます。従来の、相続人を対象とする寄与分(民法904条の2)では「財産の給付」も対象になっていましたが、特別寄与料では認められません。

特別縁故者

「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」とは、被相続人(亡くなった人)と特別親しい関係にあったことを理由に、法定相続人がいないときに遺産の全額または一部を取得できる人を指します(民法958条の3)。
例えば内縁の配偶者は法定相続人ではないので、遺言がない限り遺産を受け取れないのが原則です。ただし<相続人としての権利を主張する者がないとき>は、「特別縁故者」として認められると遺産の全部や一部を受け取れる可能性があります(民法958条の2)。

「特別縁故者」として認められる条件
1.被相続人に相続人(配偶者、子、父、母、兄弟等)がおらず、かつ、遺言書がないこと
2.被相続人と生計を同じくしていた者であること
3.被相続人の療養看護に努めた者であること ※対価を得て行う介護ヘルパーや医師などは対象に含まれません
4.被相続人と特別の縁故のあった者であること

 

な行

内縁配偶者の相続権

事実婚の夫婦は法定相続人となることはできません。そのため長年一緒に暮らして共に財産を築いてきたとしても、内縁関係のパートナーには財産を受け取る法律上の権利はありません。
また、亡くなられた方の介護や生活の手伝いを行っていた「親族」については、亡くなられた方の遺産に対してその貢献分の権利を主張できる「特別寄与分」という制度がありますが、「内縁配偶者」は「親族」ではないので、「特別寄与分」の権利主張もできません。
唯一、死亡した方に相続人がいない場合は、内縁配偶者が「特別縁故者」と認められれば、遺産を受け取れる可能性があります。このため、内縁の配偶者の生活を守るためには、遺言や生前贈与の活用が重要です。

二次相続

夫婦の一方が亡くなった際の相続を一次相続といい、その後さらにもう一方の配偶者が亡くなった際の相続を「二次相続」といいます。

 

は行

配偶者居住権

配偶者が被相続人の相続開始時に、被相続人所有の自宅に居住していた場合、最長でその配偶者の死亡時まで自宅に住み続けることができる権利のことです。
配偶者居住権は、取得した配偶者の相続発生または存続期間満了によって消滅します。しかし、相続発生等前に建物等所有者との合意により消滅した場合には、その時点での権利の価値が移転したことにより、適正な対価の支払いがない場合には、適正な対価との差額分が贈与されたことになります。

配偶者の税額軽減特例

配偶者が相続または遺贈により取得した財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のどちらか大きい額まで、相続税が課税されない特例のことです。

被相続人

被相続人とは「相続される人」のことです。 一般に「亡くなった人」または「故人」と呼ばれる人が被相続人です。

負担付遺贈

受遺者(遺言によって財産を受けるもの)に、例えば、全財産を残す代わりに妻の扶養や介護を義務付ける内容の遺言です(民法1002条)。

法定相続人

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいいます。

 

死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
・第一順位の相続人・・・被相続人に子がある場合には、子と配偶者が相続人となります。ただし、子が被相続人より先に亡くなっている場合などは、直系卑属(孫・ひ孫等)が相続人となります(=代襲相続)。
・第二順位の相続人・・・被相続人に子およびその直系卑属がない場合などは、直系尊属(父母・祖父母等)と配偶者が相続人となります。
・第三順位の相続人・・・被相続人に子およびその直系卑属がなく、直系尊属も死亡している場合などは、兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。ただし、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合などは、その者の子(甥・姪)が相続人となります(=代襲相続)。

 

相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

法定相続分

法定相続分は次のとおりです。
なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

法定相続人の状況 法定相続分
配偶者と子供が相続人である場合 配偶者2分の1 子供(2人以上のときは全員で)2分の1
配偶者と直系尊属が相続人である場合 配偶者3分の2 直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合 配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1
法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から、全国の登記所(法務局)で,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。
従来は、相続手続では、お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を、相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がありました。
法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用することで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。
「法定相続条制度」は無料であり、相続手続きが楽になるので便利な制度ですが、登記所に提出する戸籍収集や、相続関係の一覧表は自分で行なう必要があります。また、「登記官がその一覧図に認証文を付した写し」を受け取るまでに1~2週間かかります。
参考 法務局HP 「法定相続情報証明制度」について

 

ま行

みなし相続財産

被相続人の死亡時においては同人の財産ではないけれど、同人が亡くなったことによって相続人が相続する財産のことです。たとえば死亡保険金や死亡退職金など、実質的には相続や遺贈により取得したのと同じ経済効果があると認められるものは、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。ただし、原則として遺産分割協議の対象外です。

や行

予備的遺言

相続人が、遺言者より先に亡くなるなど、不測の事態が発生しても支障がないように、遺言書にあらかじめ別シナリオを記載しておく遺言です。
例えば、遺言者が長男(子供がいる)と二男に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言のうち、長男に相続させることにした部分が無効となるために、相続人間で改めて遺産分割協議をしなければ、その帰属が決まらないことになります。
そこで、そのようなことがないように、あらかじめ遺言に、①「遺言者は、その有する△△ の財産を、長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに、②「遺言者は、長男が遺言者に先立って、または遺言者と同時に死亡したときは、長男に相続させるとした財産を、長男の子供に均等の割合で相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときでも、長男に相続させようとした財産を、長男の子供に相続させることができることになります。
なお、公正証書遺言において、主位的な遺言と予備的な遺言とを1通の遺言公正証書に併せて記載する場合には、主位的な遺言により手数料が算定され、予備的な遺言については手数料はかかりません。 これに対し、まず、主位的な遺言のみの遺言公正証書を作成し、後日になって、予備的な遺言を追加するために、予備的な遺言の遺言公正証書を作成する場合には、予備的な遺言について手数料の算定がなされます。
(参考 公証人連合会 公証事務手数料

 

ら行

暦年贈与

毎年1月1日~12月31日までの間(暦年)に受けた贈与財産の合計額に応じて贈与税を払う、いわゆる一般的な贈与のことです。1年間に受けた贈与の合計額のうち110万円までの部分については贈与税が課税されません。暦年贈与の基礎控除は受贈者ごとに適用できるので、3人に110万円ずつ贈与した場合は合計330万円が非課税になります。
暦年贈与は長期間でこつこつ贈与するケースに向いています。贈与者の年齢が若いほど贈与期間も長くなるので、1回の贈与が少額であっても、長期間続けると1,000万円や2,000万円の財産でも非課税贈与できることになります。


用語集 遺言・相続