遺言とは、一生をかけて自分が築き守ってきた財産を、後の世代に最も有効に活用してもらうために行なう遺言者の意思表示です。
遺贈とは、遺言によって、遺産の全部または一部を、無償であるいは負担付きで、他人に譲ることです。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります(民法964条)。遺贈を受けたもの(受遺者)は遺言者の死亡後にいつでも。遺贈の放棄ができます(民法986条)。
遺贈と相続との違いは以下のような点です。
・遺贈は遺言を残す必要がある。
・譲る相手(受遺者)は相続人でなくてもよい。また、受遺者は個人でなくNPOなどの団体でもよい。
遺言能力とは、遺言者が遺言の際に、遺言内容及びその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力(判断力)のことです。民法では、満15歳になった人は、遺言ができるとしています(民法961条)ので、15歳以上であることも遺言能力の条件となります。
遺言能力とは何かについて、具体的で明確な基準はないので、認知症の方でも遺言が有効とされる場合もないわけではありません。しかし、遺言者が認知症になったり、死期直前で判断力がない段階になってしまうと、すべての相続人が「判断力がある」とは考えないかもしれません。その段階になると、相続トラブルを恐れ、金融機関や遺言の専門家も関与しにくくなります。遺言は自分が元気なうちに作成することが望まれます。
遺言の効力は遺言者の死亡のときです(民法985条1項)。このため、遺言に書いたことと異なる財産の処分を、生前に遺言者が行なうことは可能です。また、未成年であっても15歳以上の人は親の同意なく遺言ができるのも、死亡時に効果が発生する遺言については、遺言時の未成年者の保護を図る必要がないからです。
共同遺言とは、夫婦など2人以上の者が同じ証書に記載する遺言のことす。共同遺言は、民法975条で禁止されています。禁止理由ですが、共同遺言では、複数の合意の遺言となるため、個人個人が自由な意思によって遺言をつぅったのかが疑問ですし、いつでも自由な遺言の撤回なども困難になるからです。
受遺者(遺言によって財産を受けるもの)に、例えば、全財産を残す代わりに妻の扶養や介護を義務付ける内容の遺言です(民法1002条)。
相続人が、遺言者より先に亡くなるなど、不測の事態が発生しても支障がないように、遺言書にあらかじめ別シナリオを記載しておく遺言です。
例えば、遺言者が長男(子供がいる)と二男に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言のうち、長男に相続させることにした部分が無効となるために、相続人間で改めて遺産分割協議をしなければ、その帰属が決まらないことになります。
そこで、そのようなことがないように、あらかじめ遺言に、①「遺言者は、その有する△△ の財産を、長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに、②「遺言者は、長男が遺言者に先立って、または遺言者と同時に死亡したときは、長男に相続させるとした財産を、長男の子供に均等の割合で相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときでも、長男に相続させようとした財産を、長男の子供に相続させることができることになります。
なお、公正証書遺言において、主位的な遺言と予備的な遺言とを1通の遺言公正証書に併せて記載する場合には、主位的な遺言により手数料が算定され、予備的な遺言については手数料はかかりません。 これに対し、まず、主位的な遺言のみの遺言公正証書を作成し、後日になって、予備的な遺言を追加するために、予備的な遺言の遺言公正証書を作成する場合には、予備的な遺言について手数料の算定がなされます。
(参考 公証人連合会 公証事務手数料)
認知とは婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)を、自分の子であると認め、戸籍法上の届出を行なうことです。遺言認知は、認知の方法のひとつで、遺言によって子供を認知するものです(民法781条2項)。認知は生前でもできますが、何らかの事情で生前の認知ができない場合に遺言による認知が行われます。認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児を認知する場合は母親の承諾が必要です(民法782条、783条1項)。なお、遺言認知があると相続人が増えることになりますので、相続人と認知を受けた人との間には利害相反関係が生じます。そのため、遺言で子の認知を行なう場合は認知届を行なう遺言執行者を立てることが必要です(戸籍法64条)。
遺言によって、信頼できる人や団体に、財産を譲渡(信託)するなどして、残された配偶者や、障害を持つ子のために、その財産を管理または処分し、必要なことを行ってもらう制度です(信託法3条2項)。民事信託・家族信託などと呼ばれます(※)。
なお、信託銀行の商品名で「遺言信託」というものもありますが、これは「遺言書の作成のアドバイス+遺言書の保管+遺言執行」のパッケージサービスのことですので、法的な意味での「信託」とは異なります。
(※)民事信託・家族信託をする方法には次の3つがあります。
1.契約による信託 <例> 父(委託者)が息子(受託者)と信託契約する。
2.遺言による信託 <例> 父(委託者)が遺言で息子(受託者)に信託する。
3.自己信託(信託宣言) <例> 父(委託者)が自分(受託者)として信託する(公正証書等が必要)。
遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言については、民法で「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(968条1項)とされています。
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