遺言・相続 用語集
杉並区 | 行政書士中村光男事務所 遺言と相続の基礎的な用語集です。

用語集 (遺言・相続)

遺言の用語集 (民法第5編相続7章 遺言関係 960条~1027条)

あ行

遺言

遺言とは、一生をかけて自分が築き守ってきた財産を、後の世代に最も有効に活用してもらうために行なう遺言者の意思表示です。遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。

 

遺言信託

遺言によって、信頼できる人や団体に、財産を譲渡(信託)するなどして、残された配偶者や、障害を持つ子のために、その財産を管理または処分し、必要なことを行ってもらう制度です(信託法3条2項)。民事信託・家族信託などと呼ばれます(※)。
なお、信託銀行の商品名で「遺言信託」というものもありますが、これは「遺言書の作成のアドバイス+遺言書の保管+遺言執行」のパッケージサービスのことですので、法的な意味での「信託」とは異なります。

 

(※)民事信託・家族信託をする方法には次の3つがあります。
 1.契約による信託 <例> 父(委託者)が息子(受託者)と信託契約する。  
 2.遺言による信託 <例> 父(委託者)が遺言で息子(受託者)に信託する。
 3.自己信託(信託宣言) <例> 父(委託者)が自分(受託者)として信託する(公正証書等が必要)。 

 

遺言の効力の発生時期

遺言の効力は遺言者の死亡のときです(民法985条1項)。このため、遺言に書いたことと異なる財産の処分を、生前に遺言者が行なうことは可能です。また、未成年であっても15歳以上の人は親の同意なく遺言ができるのも、死亡時に効果が発生する遺言については、遺言時の未成年者の保護を図る必要がないからです。

 

検認
公正証書遺言
公証役場
公証人
遺言検索システム

 

遺言執行者

 

遺言認知

認知とは婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)を、自分の子であると認め、戸籍法上の届出を行なうことです。遺言認知は、認知の方法のひとつで、遺言によって子供を認知するものです(民法781条2項)。認知は生前でもできますが、何らかの事情で生前の認知ができない場合に遺言による認知が行われます。認知する子供が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児を認知する場合は母親の承諾が必要です(民法782条、783条1項)。なお、遺言認知があると相続人が増えることになりますので、相続人と認知を受けた人との間には利害相反関係が生じます。そのため、遺言で子の認知を行なう場合は認知届を行なう遺言執行者を立てることが必要です(戸籍法64条)。

 

遺言能力

遺言能力とは、遺言者が遺言の際に、遺言内容及びその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力(判断力)のことです。民法では、満15歳になった人は、遺言ができるとしています(民法961条)ので、15歳以上であることも遺言能力の条件となります。

 

遺言能力とは何かについて、具体的で明確な基準はないので、認知症の方でも遺言が有効とされる場合もないわけではありません。しかし、遺言者が認知症になったり、死期直前で判断力がない段階になってしまうと、すべての相続人が「判断力がある」とは考えないかもしれません。その段階になると、相続トラブルを恐れ、金融機関や遺言の専門家も関与しにくくなります。遺言は自分が元気なうちに作成することが望まれます。

 

遺贈

遺贈とは、遺言によって、遺産の全部または一部を、無償であるいは負担付きで、他人に譲ることです。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります(民法964条)。遺贈を受けたもの(受遺者)は遺言者の死亡後にいつでも。遺贈の放棄ができます(民法986条)。
遺贈と相続との違いは以下のような点です。
・遺贈は遺言を残す必要がある。
・譲る相手(受遺者)は相続人でなくてもよい。また、受遺者は個人でなくNPOなどの団体でもよい。

自筆証書遺言

遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言については、民法で「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(968条1項)とされています。

 

か行

共同遺言の禁止

共同遺言とは、夫婦など2人以上の者が同じ証書に記載する遺言のことす。共同遺言は、民法975条で禁止されています。禁止理由ですが、共同遺言では、複数の合意の遺言となるため、個人個人が自由な意思によって遺言をつぅったのかが疑問ですし、いつでも自由な遺言の撤回なども困難になるからです。

 

さ行

自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言は、自書さえできれば遺言者本人のみで作成でき、特別の費用もかからず手軽で自由度の高いものです。しかし、遺言者の死亡後、相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等に改ざんされる等のおそれが指摘されていました。この自筆証書遺言のメリットは残して、問題点は解消する制度として、2020年7月から開始した制度が、法務局(遺言書保管所)での保管制度です。詳しくは⇒「自筆証書遺言の保管制度/杉並区の行政書士が解説」

 

た行

 

は行

負担付遺贈

受遺者(遺言によって財産を受けるもの)に、例えば、全財産を残す代わりに妻の扶養や介護を義務付ける内容の遺言です(民法1002条)。

 

ま行

 

や行

予備的遺言

相続人が、遺言者より先に亡くなるなど、不測の事態が発生しても支障がないように、遺言書にあらかじめ別シナリオを記載しておく遺言です。

 

例えば、遺言者が長男(子供がいる)と二男に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言のうち、長男に相続させることにした部分が無効となるために、相続人間で改めて遺産分割協議をしなければ、その帰属が決まらないことになります。

 

そこで、そのようなことがないように、あらかじめ遺言に、①「遺言者は、その有する△△ の財産を、長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに、②「遺言者は、長男が遺言者に先立って、または遺言者と同時に死亡したときは、長男に相続させるとした財産を、長男の子供に均等の割合で相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときでも、長男に相続させようとした財産を、長男の子供に相続させることができることになります。

 

なお、公正証書遺言において、主位的な遺言と予備的な遺言とを1通の遺言公正証書に併せて記載する場合には、主位的な遺言により手数料が算定され、予備的な遺言については手数料はかかりません。 これに対し、まず、主位的な遺言のみの遺言公正証書を作成し、後日になって、予備的な遺言を追加するために、予備的な遺言の遺言公正証書を作成する場合には、予備的な遺言について手数料の算定がなされます。
(参考 公証人連合会 公証事務手数料

 

ら行


用語集 相続(遺言以外)

相続の用語集

 

あ行

 

か行

 

さ行

成年後見人制度

高齢化などにより判断能力が低下すると、日常生活上で、財産への不利益を受けたり、人間の尊厳が損なわれたりする心配が生じてきます。このような場合において、法律面や生活面を支援する仕組みが「成年後見制度」です。
本制度のうち判断能力が衰える前に、本人が「支援する人」と「支援内容」を決めておく仕組みを「任意後見制度」といいます。また、判断能力が衰えた後に支援する仕組みを「法定後見制度」といい、支援の必要性によって、「補助」「保佐」「後見」の3類型があります。 詳しくは⇒成年後見制度をわかりやすく整理しました。

 

相続人不存在

法定相続人がいない場合は、民法の「相続人不存在」の規定が適用され、その方の財産は、 最終的に国庫に帰属することになります。
もし、ご自身に法定相続人がいない場合に、お世話になった方や 親しい方、または財団などに財産を残したいなどお考えでしたら、遺言でその意思をのこすことをおすすめします。

 

相続の順位

相続の順位は以下の通りです。
・配偶者(常に相続人)
・子とその代襲相続人(第1順位)
 実子、養子、非嫡出子
・直系尊属(第2順位)
 第1順位に該当する者(代襲相続人含む)がなく、第1順位の相続人が相続欠格者であるか相続放棄した場合
・兄弟姉妹(第3順位)
 兄弟姉妹の子は代襲相続することができる(甥・姪までは代襲相続できる。)

 

た行

胎児の相続

民法は、まだ生まれていない子ども(胎児)にも、相続人の地位を認めています(民法886条1項)。
胎児は相続においてはすでに生まれたものとして扱うため、胎児も、遺産分割、代襲相続、相続放棄が可能です。
ただし、母親が胎児の代理人として決定権を持つとすると、母親有利の内容で遺産分割協議を成立させることができてしまいます。そのため、この場合にも適法に遺産分割を実現するためには、特別代理人を選任する必要があります(民法826条)。
また、死産だった場合には胎児は相続人として扱われないため、懐胎中に実施した遺産分割協議が無意味になってしまうリスクがあります。そのため、遺産分割を急ぐ特段の事情がない限りは、出生後に特別代理人を選任し協議をすることが望ましいとされます。判例も、胎児の権利は「停止条件説」という立場に立っています。これは、胎児の間は権利能力はないが,無事に生まれると相続の開始や不法行為の時に遡って権利能力を取得する。つまり、 出生までは権利能力がないので,胎児に法定代理人は付けられないという考え方です。
一方、胎児について、解除条件説という考え方があります。解除条件説とは、胎児が生まれる前であっても相続する権利があり、死産となったときだけ、相続開始のときにさかのぼって相続する権利がなかったとする考え方です。 不動産登記実務では、胎児名義の登記手続きも認められていますが、それは解除条件説の考え方に基づくものです。

 

な行

 

は行

法定相続分

法定相続分は次のとおりです。なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。 民法900条

 

<配偶者と子供が相続人である場合>
配偶者2分の1 子供(2人以上のときは全員で)2分の1

 

<配偶者と直系尊属が相続人である場合>
配偶者3分の2 直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1

 

<配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合>
配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1

 

ま行

 

や行

 

ら行

 

わ行

 

 

 

 

 

相続の開始

 

 

 

代襲相続

代襲相続とは、本来相続人となるべき人が死亡している場合に、その人の子が代わりに相続人となる制度です。
典型的なパターンは、親より子どもが先に死亡しているケースです。この場合、子どもに子どもがいれば、孫が代わりに相続人となります。
代襲相続の目的は、相続人の相続に対する期待の保護と、相続の公平性の確保です。

 

<再代襲相続>
・相続人の子も相続開始よりも先に亡くなっているようなときは孫が、孫も亡くなっていればひ孫が・・・という様に、どこまでも下の代まで代襲して相続をするという制度もあります。これを、再代襲相続といいます。再代襲は、相続発生前に「子」が死亡している場合に生じます(民法887条3項)。

 

・兄弟姉妹が相続人になる場合にも、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合には代襲相続の規定が適用され、兄弟姉妹を代襲して甥や姪が相続人になります。
しかし、子の代襲の場合とは異なり、甥や姪が亡くなっている場合は、さらに甥や姪の子供は相続人になりません。兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合の代襲相続は、甥や姪1代限りとなります。

 

養子縁組

失踪宣告

失踪宣告とは、生死不明の人について、家庭裁判所が「法律上は死亡したもの」とみなす制度です。失踪者を死亡したものとみなし、財産関係などについての法的な安定を確保するのがこの制度の趣旨です。(民法30条~32条)

 

特別縁故者

「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」とは、被相続人(亡くなった人)と特別親しい関係にあったことを理由に、法定相続人がいないときに遺産の全額または一部を取得できる人を指します。

 

例えば内縁の配偶者は法定相続人ではないので、遺言がない限り遺産を受け取れないのが原則です。ただし<相続人としての権利を主張する者がないとき>は、「特別縁故者」として認められると遺産の全部や一部を受け取れる可能性があります(民法958条の2)。

 

「特別縁故者」として認められる条件
1.被相続人に相続人(配偶者、子、父、母、兄弟等)がおらず、かつ、遺言書がないこと
2.被相続人と生計を同じくしていた者であること
3.被相続人の療養看護に努めた者であること ※対価を得て行う介護ヘルパーや医師などは対象に含まれません
4.被相続人と特別の縁故のあった者であること

 

遺産

 

相続財産

 

相続財産法人

遺産相続が始まり、被相続人の戸籍上相続人の存在が認められない場合や、相続人がいてもすべての相続人が相続放棄をした等の場合は、被相続人の遺産は「相続財産法人」となります。 民法951条

 

一身専属権
祭器財産

法定相続人

法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人です。遺言書があれば、相続できる人は法定相続人に限られませんが、遺言書がない場合は基本的に法定相続人同士で遺産分割について協議し、どのように相続するかを決めることになります。

 

法定相続人になる人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族です。血族相続人には相続順位が定められており、相続順位は下記のように定められています。(民法887条、889条、890条)

第1順位:子ども、代襲相続人(直系卑属)
第2順位:親、祖父母(直系尊属)
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)

 

内縁配偶者の相続権

事実婚の夫婦は法定相続人となることはできません。そのため長年一緒に暮らして共に財産を築いてきたとしても、内縁関係のパートナーには財産を受け取る法律上の権利はありません。

 

また、亡くなられた方の介護や生活の手伝いを行っていた「親族」については、亡くなられた方の遺産に対してその貢献分の権利を主張できる「特別寄与分」という制度がありますが、「内縁配偶者」は「親族」ではないので、「特別給与分」の権利主張もできません。

 

唯一、死亡した方に相続人がいない場合は、内縁配偶者が「特別縁故者」と認められれば、遺産を受け取れる可能性があります。

 

このため、内縁の配偶者の生活を守るためには、遺言や生前贈与の活用が重要です。

 

単純承認
相続放棄
限定承認
遺産分割
遺産分割の基準
遺産分割自由の原則
現物分割
換価分割
代襲分割
利益相反行為
成年後見制度

死後認知

死後認知とは、非嫡出子(=法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子)と既に死亡した父親との親子関係を法律上確定するための手続きです。
死後認知が認められると、その効力は出生の時にさかのぼります(民法784条)。認知された非嫡出子は父親の遺産を相続できます。このように、死後認知は非嫡出子の相続権を確保する制度です。
なお、父の死後に凍結保存精子で懐胎した子供は、父の相続人になれないという判例(最判平18.9.4)があります。

 

相続欠格

相続欠格とは、相続人が重大な非行を行った場合に、遺産を相続する権利を失う制度です(民法891条)。

相続欠格の事由には、次のようなものがあります。
・故意に被相続人や相続人を殺害したり、殺害しようとしたりして、刑に処せられた者
・被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
・故人が殺害されたことを知って告訴や告発をしなかった者
・詐欺または強迫によって故人に遺言に関する行為をさせた者
・詐欺または強迫によって故人の遺言に関する行為を妨げた者

相続廃除者は受遺者になれますが、相続欠格となった者は受遺者にもなれませんし、遺留分もありません。

 

ただし、被相続人から「宥恕(ゆうじょ:罪や過ちを許すこと)」してもらうことで再度相続人に認められた裁判例があります(広島家裁呉支部平成22年10月5日審判)。

 

相続廃除

相続廃除とは、被相続人がその者に財産を相続させたくないことも当然と思われるような事由(例えば、被相続人を虐待しているなど)がある場合に、被相続人の意思に基づいて、その者の相続権を失わせる制度です(民法892条~895条)

 

相続廃除の対象者は、「遺留分を有する」推定相続人のみです(遺留分がないなら、遺言で相続させないことができるため)。

 

相続廃除の手続きができるのは、被相続人のみです。手続きの方法は、生前廃除と遺言廃除(遺言執行者が手続きを行う)の2つです。なお、高齢による認知症等で被相続人本人が行為能力の制限を受けていても、法定代理人によらずに自分で手続きができます。

 

法定相続情報制度

平成29年5月29日から、全国の登記所(法務局)で,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

 

従来は、相続手続では、お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を、相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がありました。

 

法定相続情報証明制度は、登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用することで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

 

「法定相続条制度」は無料であり、相続手続きが楽になるので便利な制度ですが、登記所に提出する戸籍収集や、相続関係の一覧表は自分で行なう必要があります。また、「登記官がその一覧図に認証文を付した写し」を受け取るまでに1~2週間かかります。

 

参考 法務局HP 「法定相続情報証明制度」について

 

 

死因贈与