株式を発行して資金を集め、その資金で事業を行う会社形態です。会社を設立する場合の選択肢は、株式会社だけでなく、持分会社と呼ばれるグループ(合名会社・合資会社・合同会社)を選ぶこともできます。「所有と経営の分離」がある点が、株式会社と他の会社の異なる点です。
合同会社とは、出資者と経営者が同一な会社形態です。合同会社では、出資者を「社員」と言います。株式会社では、出資者(=株主)と、業務執行者(=取締役)は分離されれいますが、合同会社では、社員が業務執行を行います。合同会社のメリットは、株式会社に比べて設立コストが低いこと、所有と経営が一致しているため、会社経営の自由度が高いこと、社員の責任は有限であること等です。
会社の意思決定や運営をする者を「機関」といい、株式会社の機関は会社法2編株式会社第4章機関に定められています。具体的には、株主総会、取締役、取締役会、監査役などです。このうち、株主総会と取締役はすべての株式会社が必ず設置しなければならない機関です。会社の規模や公開性によって、法律の範囲(会社法327から328条)で自由に機関設計ができます。なお、小会社では多くが、取締役会非設置となっています。
合同会社に、所有と経営の分離はないので、株式会社のように、所有者(=株主総会)以外に様々な機関を分離していく発想はありません。ただ、合同会社には「社員総会」「代表社員」「業務執行社員」という役割かありますので、定款によって、これらの役割を調整することで組織の設計はできます(会社法577条、599条など)。
定款とは、会社の組織と運営に関する事項を定める基本的なルール(会社の憲法)です。
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、発起人全員が署名または記名捺印しなければなりません(会社法26条1項)。
定款に記載される事項のうち、必ず記載しなければならない事項を「絶対的記載事項」、定款に記載することは必要でないが定款で定めないとその事項の効力が認められない事項を「相対的記載事項」、定款に記載しなくても、株主総会・取締役会によって制定する規則等でも有効だが、事項の明確化のために定款に記載されている事項を「任意的記載事項」と言います。
定款作成の際には、公証人連合会のホームページにひな形が参考になります。
役員の就任承諾書とは、会社が役員を選任した際に、その役員が就任することを承諾したことを証明する書類です。会社から委任を受けて役員となるため、就任する際には承諾が必要となります。役員就任承諾書は、登記に必要となります。記載例は、法務局のHPで見ることができます。https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001331002.pdf
払込証明書は資本金の払込があったことを証明する書類です。設立時発行株式数や払込を受けた金額、日付などが記載されています。 払込証明書が必要になるのは「会社設立の登記申請を行う場合」と「資本金を増資して変更登記を行う場合」です。会社設立の際には、法人名の銀行口座はないため、会社の発起人名義の口座に出資者から資本金が振り込まれますので、払込証明書を作成します。
記載例は、法務局のHPで見ることができます。https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001331002.pdf
株式会社の設立方法は、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法(発起人設立、会社法25条1項1号)が主流です。このほかに、発起人以外にも設立時発行株式の引き受けをする者を募集する方法(募集設立、会社法25条1項2号)もありますが、手続きが複雑です。
一般的な株式会社設立の流れは、以下のとおりです。
①定款の作成
②出資(金銭・現物出資)の履行
③機関の設置
④設立の登記申請
⑤設立
参考 法務省 株式会社の設立手続(発起設立)について
株式会社を設立する際の、設立時発行株式の引受人で、設立に関する事務を行う者を発起人といいます。発起人は、会社設立の後、出資した資本金の金額に応じて株式が発行され株主となります。
登記申請書には、主に次の書面を添付しなければなりません(商業登記法第47条ほか)。
(1) 定款(公証人による認証済のもの)
(2) 発起人全員の同意又はある発起人の一致があったことを証する書面
(3) 設立時取締役等の就任承諾書
(4) 設立時代表取締役の就任承諾書
(5) 設立時取締役等の調査報告を記載した書面及びその附属書類(会社法第28条に掲げる事項につき検査役の調査を受けた場合に添付を要する。)
(6) 金銭の払込みがあったことを証する書面(※1、3)
(7) 印鑑証明書(取締役会設置会社の場合は設立時代表取締役が就任承諾書に押印した印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書、取締役会非設置会社の場合は設立時取締役が就任承諾書に押印した印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書の添付を要する。)(※2、3)
(8) 設立時取締役等の本人確認証明書(設立時取締役等が就任承諾書に押印した印鑑につき市町村長の印鑑証明書が添付されている場合を除く。)
(9) 資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面(設立に際して出資される財産が金銭のみである場合は、添付を要しない。)
(10) 設立時取締役が設立時代表取締役を選定したときは、これに関する書面
(11) 代理人によって登記を申請するときは、その権限を証する書面 等
なお、書面申請の場合は、印鑑届書に所要事項を記載し、届出印(会社代表者印)を押印するほか、会社代表者の個人印をも押印し、当該印鑑届書を提出しなければなりません(商業登記規則第9条第1項、第5項)。
※1 設立時代表取締役が作成した払込取扱機関に払い込まれた金額を証する書面に、払込取扱機関における口座の預金通帳の写し又は取引明細表その他の払込取扱機関が作成した書面のいずれかを合わせたものを金銭の払込みがあったことを証する書面として取り扱うことができます。なお,払込取扱機関は、内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)も含まれます。また、内国銀行の海外支店も払込取扱機関に含まれます。
※2 外国人が市町村に印鑑登録をしていない等の場合は、記名押印することに代えて署名すれば足りますが、その場合には署名が本人であることの本国官憲(当該国の領事及び日本における権限がある官憲を含みます。)の作成した証明書(いわゆるサイン証明書)を添付する必要があります。
※3 法務省ホームページ「外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00104.html)
定款認証とは、正当な手続きによって定款が作成されたことを公証人が証明することです。株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ有効になりません(会社法30条1項)。なお、公証人の認証前の最初に作成する定款のことを原始定款といいます。 認証を受けた定款がなければ、株式会社の設立登記をすることができません。
なお、合同会社などの持分会社の場合には、定款の認証は不要です。
会社法49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」とします。設立登記は、会社の成立要件です。
設立登記の目的は、会社の概要を一般に開示し、法人として公的に認めてもらうことです。 具体的には、社名(商号)や本社所在地、代表者の氏名と住所、事業の目的といった会社に関する概要事項を法務局に登録します。 設立登記を行うと、正式に登記を行った証拠として、法務局から登記事項証明書が発行されます。
設立登記は、その本店の所在地において、設立時取締役等の調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません(会社法第911条第1項)。
法人設立届出書とは、会社を設立したことを税務署や都道府県・市町村に知らせる書類です。法人税や消費税などの国税を納付する法人を設立した場合に、法人税法およびその施行規則に基づいて提出が義務付けられています。
労働保険保険関係成立届とは、従業員を雇用している事業所が労働保険の適用事業所となったことを所轄の労働基準監督署や公共職業安定所に届け出る書類です。
提出期限は、労働者を雇用した日(保険関係が成立した日)の翌日から10日以内です。
労働者を1人でも雇い入れた会社は労働保険(労災保険と雇用保険)の成立手続を行う必要があります。その手続きの際に提出する書類の一つが「労働保険の概算保険料申告書」です。概算保険料申告書の提出は、保険関係成立届と一緒に提出する場合には、所轄の労働基準監督署です。成立届を提出した後に申告書を提出する場合には、所轄の労働基準監督署、所轄の都道府県労働局や日本銀行の歳入代理店等でも提出可能です。
雇用保険の適用事業所とは、労働者を雇用している事業所を指し、原則として業種や規模を問わず、すべて適用事業となります。雇用保険適用事業所設置届とは、新しく雇用保険の適用を受ける事業所が提出する書類です。
事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から 5 日以内に事業主が、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を行わなければなりません。 任意適用を申請する事業所(常時使用する従業員が 5 人未満の個人事業所またはサービス業の一部・農業・漁業等の個人事業所)は、「任意適用申請書」を提出してください。 詳しくは、日本年金機構のホームページをご覧ください。
東京都中小企業振興公社による一定の要件を満たす都内で創業を予定されている方または創業して5年未満の中小企業者等の方に、従業員人件費、賃借料、広告費等、創業初期に必要な経費の一部を助成する制度です。上限は400万円、助成率は2/3(2024年9月現在)です。詳しくは、ここをご覧ください。